バブル期の証券会社が舞台の小説「真珠とダイヤモンド」の感想

「真珠とダイヤモンド」はバブル前期の諸運会社が舞台の小説です。2023年2月が初版ですが、作者の桐野夏生先生は以前からバブルの時代の話を書いてみたいと思っておられたそうです。

この小説の主人公と同じ時期に証券会社に就職したわしに読んでくれと言わんばかりの小説ですね。 でも読んだら「こんなの株屋じゃねーわ!」となる可能性もありますけどねw

結論から言えばそんなことなかったです。それなりに楽しんで読ませて頂きました。

 

「真珠とダイヤモンド」のあらすじは?

「真珠とダイヤモンド」は1986年に準大手証券の福岡支店に大卒の望月昭平、短大卒の小島佳那、高卒の伊東水矢子3人の新人が入社した所から始まります。ちょうどバブルが始まった頃ですね。

こういう小説だと普通は大手証券で東京が舞台になると思いますが、準大手で福岡支店と言うのが渋いですね。もちろん福岡も都会は都会ですが。

 

一応、3人全員が主人公だと思いますが、それでも真の主人公となると一番年下の伊東水矢子ですかね。ラストまで出て来ますしね。

望月はなりふり構わず上を目指し、佳那も一緒に夢を追うことになります。望月はトップセールスとして成功し、東京に転勤になり佳那と結婚します。

水矢子も自分の夢の為に会社を辞め、大学に入学するために東京に出て来ますが・・

結局、最後は全員転落してしまいます。ラストは荒唐無稽ではありますが悲しいですね。

 

当時の証券会社の支店の描写がリアル!

桐野先生はよく取材されてますな。 知人、友人の中に元証券マン、証券レディをしておられた方がいたのかも知れません。

当時の株屋の支店の中の雰囲気、営業をリアルに描写出来てると思います。同じ頃に証券会社に勤めていたわしが読んでもそんなに違和感は感じませんでした。

特にNTTが上場する時の営業の辺りは秀逸ですね。 どこの証券会社でも大筋はこんな感じだったはず。

たださすがに完璧とは言えないですね。 突っ込みどころがない分けじゃない。

あとファッションとか街の風景も上手く描かれていると思います。当時を知る者なら同じような光景が目に浮かぶんじゃないですかね。

 

とは言え不満な点も・・

しかし手放しで絶賛出来るかとなるとねえ。残念と言うか不満な点もあります。

ここまで取材したならブラックマンデーも描いて欲しかったですね。バブル前期の象徴的な出来事ですからね。

あとや90年の下げ相場もです。 何と言っても過去最大の下げ相場で主人公たちが転落するきっかけになった相場ですからね。

まあ基本は相場の小説ではないですからね。省かれていても仕方ないかも知れません。

ただその点が相場好きにとってはモノ足りなく感じます。

 

それと望月は手段を選ばす今で言う反社の人間にも取り入ります。もちろん今なら即アウトですが、バブル期はありでしたからね。

ただいくら反社の人間と言ってももねえ。さすがにここまでやらんでしょう。

それとあっさりやられ過ぎ!男ならイチかバチかで抵抗せいっちゅうのw

まあ小説ですからね。リアルでは株屋の営業マンでこんな最後を迎えたヤツはおらんと思いますけどねw

 

最後に・・

今回は桐野夏生さんの「真珠とダイヤモンド」を読んだ感想を記事にしてみました。

まとめますと、相場の小説ではないですね。それを期待して読むと?となると思います。単純にバブル期の証券会社を舞台にした小説として読んだ方が良いと思います。

もちろん面白いとは思います。元株屋としてはいろいろと思い出して懐かしく思いました。

ただ証券会社はもちろん相場のことを知らない人が読んだらどう思うのかなと言うのはありますね。でも桐野先生のファンやバブル期に興味がある方にはお奨めかも知れません。